女性の泌尿器

女性泌尿器科

女性泌尿器科

最近は過活動膀胱や尿漏れ用品などのコマーシャルが増えてきたことで排尿に関する問題が女性に多いことが知られてきています。それでも泌尿器科への受診は女性にとってまだハードルが高いかもしれません。ただし、尿漏れや頻尿、尿失禁、排尿時の痛みや違和感などの症状は、重大な病気が隠れている可能性もありますし、そうではなくても専門医による適切な治療を受ければ改善や進行を防ぐことが可能です。排尿に関するお悩みは、外出が億劫になるなどクオリティ・オブ・ライフを大きく低下させてしまいますので、お気軽にご相談いただけたらと考えています。

当院では、女性特有のお悩みに寄り添って治療を進めています。診療では、検査として尿検査のための採尿、そして必要があれば超音波検査を行い、後はじっくりお話をうかがって診断しています。おひとりで悩んだり、あきらめてしまわずに、安心してご相談にいらしてください。

こんな症状ありませんか?

  • 排尿に時間がかかるようになった
  • 尿意があるのに少量しか出ない
  • 排尿時に痛みがある
  • 残尿感がある
  • 頻尿
  • くしゃみや笑った時に少量の尿漏れがある
  • 急に強い尿意が起こり、トイレが間に合わないことがある
  • トイレの不安があって出かけるのが億劫になった
  • 睡眠中、何度もトイレに起きる
  • 尿が赤っぽい
  • 尿が濁っている

主な疾患

過活動膀胱

頻尿、夜中に何度もトイレに起きる夜間頻尿、急に強い尿意が起こる尿意切迫感、急な強い尿意で間に合わず漏らしてしまう切迫性尿失禁、尿漏れなど、排尿に関するトラブルが起こる疾患です。過活動膀胱は神経因性とそれ以外の非神経因性に分けられています。神経因性は脳と膀胱を結ぶ神経の障害が原因とされています。実際には非神経因性過活動膀胱が8割以上を占めており、これには加齢による骨盤底筋肉の衰えや下部尿路閉塞、女性ホルモン減少による膀胱の過敏化などが関係していると考えられています。

排尿筋が過剰に収縮して膀胱にたまる尿量が減少するため、過活動膀胱では頻尿や急な強い尿意が起きやすくなっています。こうした症状は40歳以上で10人に1人が経験しているとされ、患者数は800万人以上にものぼるとされています。

膀胱炎

頻尿や残尿感、排尿時の痛み、尿の白濁、血尿、下腹部の不快感などの症状があります。通常、膀胱炎単独では発熱することはありません。膀胱炎は女性に多い泌尿器疾患です。原因は大腸菌などの細菌感染で、疲れや病気で抵抗力が落ちている時にかかりやすくなっています。排尿を我慢し過ぎることや性交渉なども発症の誘因になっているケースがあります。
抗生物質などによる治療を行い、症状は数日程度で改善します。膀胱炎に似た症状をきたす疾患に膀胱がん、膀胱結石などがあるため、抗生物質によって膀胱炎症状が改善しない場合にはこれらの疾患を念頭に入れた検査を行います。

血尿

見た目でわかる肉眼的な血尿と、尿検査でわかる尿潜血があります。肉眼的な血尿の場合、痛みがあれば膀胱炎、痛みがなければ膀胱がんや腎臓がんの可能性があります。また尿潜血も尿路結石や腎炎をはじめとする重大な病気の可能性があります。尿に血が混じる、尿の色が濃い、検診などで尿潜血を指摘されたら、できるだけ早く泌尿器科を受診してください。

腹圧性尿失禁

くしゃみや咳、大笑いをした時など、急に腹圧がかかると尿漏れする疾患です。歩く・走る、階段の上り下り、ジャンプ、重いものを持ち上げるなどで尿漏れするケースもあります。 骨盤底筋の衰えなどによって尿道をしっかり締められなくなることで起こります。女性は尿道が短いため尿漏れを起こしやすく、出産も骨盤底筋をゆるませてしまう原因になります。また肥満も脂肪の重みが骨盤にかかって尿漏れを起こしやすくなると指摘されています。

骨盤臓器脱

骨盤には内臓を支えている骨盤底筋があります。この骨盤底筋が衰えてゆるみ、内臓を支えきれなくなると膣の中に内臓が下りてきてしまうことがあります。内臓によって膣が押されて裏返り、体外に脱出するのが骨盤臓器脱です。実際に丸いものが飛び出ているケースもありますが、下腹部の違和感や股に何かはさまっているように感じる場合もあります。また、腹圧性失禁の尿漏れなどの症状がともなう場合もあります。早期には腹圧がかかった時だけ症状が現れ、進行するといつも脱出したままになります。
出産時に骨盤周辺の筋肉や靭帯などが傷ついて骨盤臓器脱が起きた場合は自然に回復する可能性がありますが、それ以外では自然に治ることは稀です。更年期を過ぎて女性ホルモンが減少すると筋肉が衰え、靭帯などもゆるんでくるため60歳代の発症が多く、出産経験があると発症しやすい傾向があります。治療が必要と判断された場合には骨盤臓器脱の経験が豊富な病院を紹介しています。

神経因性膀胱

膀胱や尿道に関係する神経の障害によって起こる病気です。尿意を感じにくい、排尿しにくい、尿漏れや尿失禁など排尿困難の症状が起こります。放置していると腎機能低下にもつながる可能性があります。神経因性膀胱が起こる原因は、先天性の病気、脊柱管狭窄症、脊髄損傷、直腸・子宮などの手術などさまざまです。膀胱の状態を調べるとともに、腎機能についても確認する必要があります。

膀胱がん

膀胱がんは50歳以上の発症率が高くなります。多くの膀胱がんは内側の粘膜である尿路上皮(移行上皮)という組織に発生します。膀胱がんを大きく分けると、内側に向かって隆起する表在性膀胱がんと、膀胱の外に向かって進展する浸潤性膀胱がんの2タイプになります。比較的発生頻度の高い表在性膀胱がんは、悪性度が比較的低く、転移も少ないですが再発しやすいという特徴があります。一方、浸潤性膀胱がんは、悪性度が高く、転移を起こしやすい傾向があります。診断では、主に超音波検査や膀胱鏡検査(内視鏡)、尿中のがん細胞の有無を調べる尿細胞診を用います。その後、治療として、膀胱鏡を使った内視鏡的切除の経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)が行われます。ここで切除した組織は採取して病理組織学的診断を行います。その後は必要に応じて、定期的な検査による経過観察、膀胱全摘出術、尿路変更術、放射線治療、抗がん剤治療などが行われます。

腎臓がん

腎臓は血液をろ過して老廃物など不要な物質を含んだ尿を作って排泄させる役割を持っており、さらに血液や血圧、骨などに関するコントロールも行っている重要な臓器です。形はそら豆に似ており、左右に1つずつあります。腎臓がんは尿生成を行う組織にできる腺がんで、透析治療を受けていると発症リスクが高いとされています。なお、腎盂がんは尿の通路である尿路にできるもので、腎臓がんとはまた別のがんです。早期の腎臓がんにはほとんど自覚症状がなく、進行すると血尿や疼痛、腹部腫瘤などが起こります。主に腎部分切除や腎摘出といった手術での治療が行われ、必要に応じて免疫療法、化学療法、放射線療法などを行います。

尿路結石

尿路は、腎臓、尿管、膀胱、尿道といった尿の通り道を指す言葉です。結石には腎結石、尿管結石、膀胱結石があり、それらを尿路結石と呼びます。結石は尿中に含まれるシュウ酸カルシウムや尿酸などの成分が結晶化したもので、腎臓で作られた後に尿管へ落ち、途中で詰まることで症状を起こします。結石により尿路の粘膜が傷付き、尿の流れが滞るため、血尿、背中やわき腹の強い痛み、発熱などの症状を起こします。小さな結石であれば自然に尿路を通過して尿とともに排出されますが、尿管には細くなっている部分が3ヶ所あり、結石のサイズが大きいとそこに詰まって突然強い痛みなどの症状を起こします。日本人は生涯で見ると10人に1人が尿路結石にかかるとされており、30~40歳の男性や閉経後の女性に多い傾向があります。なお、胆石は尿路結石とは別のメカニズムで起こる、まったく違う病気です。
治療は、主に痛みを抑えながら自然排出を待つ薬物療法が行われますが、結石のサイズが大きい場合には結石を砕く体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や経尿道的尿管砕石術(TUL)を行う必要があります。腎結石や膀胱結石の場合も大きさなどによっては破砕が必要になるケースがあります。副甲状腺機能亢進症や高尿酸血症などの病気で結石ができているケースもありますので、こうした基礎疾患があればその治療も不可欠です。結石は再発しやすいため、結石が排出した後も毎日2リットル程度の水分補給を行うようにします。また、定期的な検査も重要です。排出された結石の成分分析を行うことで予防につなげることもできます。

尿勢低下

尿の勢いが弱い状態です。尿意があるのになかなか尿が出ない、残尿感など排尿困難の症状がともなう場合もあります。病気によって膀胱の筋力低下や尿道狭窄などが起きている可能性もありますので、以前より尿の勢いが弱くなったなどの症状がありましたら受診をおすすめしています。

尿道ポリープ

ポリープが尿道にできるもので、尿道カルンクルと呼ばれることもあります。ポリープができるのは尿道の出口の肛門寄りの場所です。出血や痛みなどの症状がある場合には治療が必要です。小さいポリープで症状がない場合には治療の必要はありません。治療では手術の他、薬物療法やいきみなど腹圧のかかる動作をできるだけ控える行動療法があります。更年期を過ぎると発症リスクが上がります。

泌尿器検査

尿検査

尿を採取して、尿に含まれるたんぱく質や糖の有無などを分析します。また、顕微鏡を用いて赤血球や白血球の有無を調べます。採尿の際には、出始めではなく中間の尿を採取することで、より正確な分析が可能になります。

超音波検査

超音波検査は音波を当てて、それが返ってくる状態から体の中にある臓器などの様子を立体的に観察できる検査です。痛みはなく、レントゲンと違い被ばくの心配もありません。そのため何度でも繰り返し行うことができます。泌尿器科では、膀胱、前立腺などの診断に超音波検査は欠かせません。また、当院では経直腸超音波検査を行っていませんので、不快感のある超音波検査もありません。

膀胱鏡

内視鏡を尿道から挿入して膀胱を観察する検査です。血尿があった場合の検査として用いられ、膀胱がんなどの検査にも有効です。なお、この検査は事前のご予約が必要で、実施しているのは平日(月・火・水・金)の午後となっています。

尿流測定検査

排尿の勢いを調べる検査です。当院ではこの計測が可能な専用のトイレを設置しており、座位と立位での計測が可能で、男女を問わず通常通り排尿するだけで計測できます。尿流測定検査は排尿状態を調べる検査であり、超音波による残尿測定と組み合わせた客観的評価は幅広い泌尿器疾患の診断に役立ちます。

TEL:045-862-5001